2012年8月19日日曜日

認知症の方と将来を語る

先日、外来に来られた患者さんです。

症 例:88歳 男性(Tさん)
疾 患:認知症、高血圧、心房細動など
家 族:奥永源寺に82歳の奥さん(高血圧で外来通院中)と二人暮らし
Tさんは以前より外来通院されていましたが、3年ほど前より「ものわすれ」が目立つようになったと奥さんから訴えがありました。
当時、外来でのHDS(長谷川式認知症スケール)では、軽度の認知症で主に短気記憶障害が目立ちましたが、周辺症状はなく生活に支障はなさそうでした。ものわすれ外来への受診や頭部CT検査も「遠方なので行けない」とのことで結局行えておらず、介護保険を勧めましたが「行きたくない」とのことで現在に至っています。

本日、外来での診察でもやはり短期記憶障害が目立ち中等度の認知症のようです。お家での様子を伺うとTさんは「畑に行っています」とおっしゃっていますが、奥さん曰く「うろうろしているだけです」と。

そんなTさんにきいてみました。

私 「ご自身で、忘れっぽくなったと思われますか」
T 「自分では、しっかりしているつもりですが、皆に間違いを指摘されています」
私 「家での生活で困ったことはありませんか?」
T 「とくにありませんな。今の所が一番です」
私 「もし、もっと具合が悪くなって、寝込んだり、食べられなくなったらどうしますか?」
T 「今では、そんなこと考えたことありません」
私 「ご飯が食べられなくなったら、どこか入院しますか」
T 「具合が悪くなっても、今の家に居たいわ」
私 「わかりました。なにかあったら連絡してください。診療所に来れなければ往診にも行きますから」
T 「ありがとう」と言われて、奥さんと一緒ににっこり笑顔で診察室をあとにされました。

農村山間部で高齢のお二人暮らし、なおかつ介護保険サービスも利用されていない方ですが、ごく普通に生活をされています。
認知症の方でも自身の人生観、終末期の希望を立派に表現していただきました。

お二人の今後の生活上の不安が少なくなるように繋がりを持っておくこと、そしてどのような方でもいつの時期でも終末期のことをきちんと話し合っていることが大切であると感じています。

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当院の在宅医療について

   ここ19年間の実績をまとめました。      死亡診断書枚数   在宅患者さん人数   訪問診療・往診のべ回数 2005年    12           66          492 2006年    17           70          553 2007年...