2015年12月31日木曜日

当院の在宅医療について

当院では在宅診療を積極的に行っております。
ここ11年間の実績をまとめました。


     死亡診断書枚数   在宅患者さん人数  訪問診療および往診のべ回数
2005年    12           66          492
2006年    17           70          553
2007年    12           69          546
2008年    22           89          736
2009年    22           98           1136
2010年    25            112           1293
2011年    23            121           1320
2012年    29            131           1571
2013年    27            141           1585
2014年              33                                      144                                   1464
2015年      36            151            1359

 永源寺地域全体では年間60人程度の方がお亡くなりになられます。当院で診断書を書かせていただいているのは、主に在宅の方になられますので、地域の半数以上の方が病院以外で息をひきとられていることになります。
往診をしながら、いろいろとご家族とお話をさせていただくことを大切にしていますが、介護をされている家族に対して「なにがなんでも家で」と強制的に勧めているわけではありません。どちらかというと、家族の方には「できるだけ仕事を休まないでください」「介護は我々のチームで行います」というようにお話させていただいております。つまり家族の負担や本人の希望など総合的に判断しながら、無理のない範囲で多職種でチームとして関わらせていただいております。
看取られた家族からは「家では無理やと思ったけど、最期まで家にいることができた」「家で最期を迎えることができ、家族も満足しています」と好意的なご意見をいただいております。
高齢化のすすむ永源寺地域ですが、地域の皆さんが安心して生活できるよう、これからもお手伝いができればと思います。

皆様、佳いお年をお迎え下さい。

2015年12月23日水曜日

雑誌に寄稿させていただきました

「認知症ケア事例ジャーナル」という雑誌に「地域で認知症の人を支える」と題したレポートを寄稿させていただきました。
地域の方々が、歳をとっても、病気を抱えても、認知症になっても、笑顔で暮らせる地域づくりの一端を知っていただける内容かと思います。
中身をお示しすることができませんが、ご紹介まで。


2015年12月2日水曜日

ドクタラーゼで紹介していただきました

日本医師会が発行する雑誌「ドクタラーゼ」に永源寺地域のことを紹介していただきました。
地域の皆で支えあう地域づくりとして紹介していただいております。




2015年11月29日日曜日

今日の京都新聞

永源寺地域で活動されているボランティアグループ「絆」さんが紹介されています。
地域の人たちを支えているのは、医療・介護の専門職だけではありません。
このような地域の人たちの、お互いを支える地道な活動が地域を支えているのだと思っています。




2015年11月25日水曜日

京都新聞大賞をいただきました

京都新聞さんが選ばれる「京都新聞大賞 教育社会賞」に選出していただきました。
大変光栄なことであり、これまで私を支えていただいた皆さん、そして関係の皆様に感謝申し上げます。
今後も、地域のために少しでも尽力させていただければと、気持ちを新たに仕事に取り組んでいきたいと思います。

このたびは本当にありがとうございます。



2015年10月12日月曜日

昨日、大阪でお話をさせていただきました

昨日、朝日新聞厚生文化事業団さんのお招きで、國森康弘さんと一緒に講演をさせていただきました。
その様子を、今朝の滋賀版に掲載していただきました。


来週は、東京でお話させていただく予定です。

http://www.asahi-welfare.or.jp/archives/2015/09/20151018.html


2015年9月22日火曜日

私の知っていること

今日は、何も予定のない休日です。
のんびり過ごすために、朝から一時間ほど散歩をしてきました。

診療所から水路の方に向かって歩き、田んぼ道を下って歳苗神社の前を通って川沿いの道へ、紅葉橋を渡って八風の湯までたどり着いたら、坂を登ってもみじさんの前を通り、また橋を渡って八尾亀の前の通りから三組の地蔵さんのところを登って、丸山薬局の前をとおって帰ってきました。
わかる人にはわかりますが、わからない人にはわからない説明ですね。

散歩の途中で、出会った人も何人かおられました。
農場を経営するHさん、これから草刈りすると言っていた市役所のNさん、新聞をとりにきたDさん、犬の散歩をしていたTさん、これから中学の部活に向かう途中か自転車に乗っていたOちゃん、歩行器を押しながら歩く練習をしていたNさん、川沿いの道を散歩していたTさんとIさん、杖で歩いていたTさん。

出会った皆さんの病気も知っています。
脳梗塞後遺症、腰部脊柱管狭窄、高血圧、汎下垂体機能低下症、COPD、糖尿病、もちろん病気のない人もいます。

その家族のことも知っています。
孫が内分泌疾患のため大学病院に通っている、旦那さんが認知症のため介護をしている、奥さんが癌のため総合病院に通院中、お母さんやおばあちゃんを家で看取った、外来で「最期まで家に居たい」とおっしゃっている私の外来に通っているおばあちゃんなど、
さらにつながりを述べることもできます。

でも、まだまだ私の知らないことがたくさんあるはず。
これからも、永源寺という地域、そしてそこに住む人達のことを知ることが私の役割ではないかと思っています。






2015年9月21日月曜日

今朝の朝日新聞

今朝の朝日新聞さん(滋賀版)に國森さんの記事が掲載されています。



電子版もありますので、ご覧ください

2015年9月20日日曜日

今朝の朝日新聞

今朝の朝日新聞さん(滋賀版)に記事を掲載していただきました。



電子版もありますので、ご覧ください。

2015年9月12日土曜日

10月は大阪と東京でお話させていただきます。

10月11日は大阪YMCA会館ホールで


10月18日は浜離宮朝日ホールで


國森さんと一緒に話をさせていただきます。
お申し込みは朝日新聞厚生文化事業団さんのサイトを御覧ください。

2015年8月26日水曜日

岐阜県大垣市でお話させていただきます

9月13日(日)岐阜県大垣市で開催される在宅医療に関する市民公開講座にお招きいただきました。
「住み慣れた地域で安心して暮らし続けるために」と題してお話しさせていただきます。

お近く方、よろしければお越しください。


2015年8月21日金曜日

三重県菰野町でお話させていただきます。

いろいろなところから依頼をお受けしておりますが、鈴鹿の山の向こう側、三重県菰野町の福祉大会でお話しさせていただく機会をいただきました。

熱いハートを持った、元気な町長さんとお出会いできるのも楽しみです。
菰野町の皆さんと一緒に「まるごとケア」を考えたいと思います。



2015年8月19日水曜日

お盆がすぎて

お盆休みも終わり、いくぶんか涼しくなってきました。
往診に伺っても、お盆の出来事などを話していただくことがよくあります。

80歳のMさんは、昨年4月に脳梗塞を発症し、左半身麻痺があります。リハビリ病院などを経て、秋から家に帰ってきて私が往診しています。
デイサービスにも通っておられますが、家では主に奥さんが介護をされています。

じつは、奥さんも認知症のため私の外来に通われていますが、「主人のことは私が」と言いながら頑張って介護とデイサービスに通っておられる日中は農作業を頑張っておられます。

先日、Mさんのところに訪問にお伺いしたら、さっぱりとバリカンで丸刈りになっておられました。奥さんが「お盆前にさっぱりしたほうが良いかと思って・・」とお部屋で散髪されたそうです。

バリカンの上には、Mさんが農作業のときにかぶっておられたであろう帽子。
今までも毎年お盆前には奥さんがMさんの散髪をされていたんだろうな・・・

そんな愛を感じる丸刈り頭とお二人の笑顔でした。



2015年8月13日木曜日

北海道でお話させていただきます

宗谷在宅医療連携ネットワーク推進協議会さんのお招きで、稚内市にお伺いします。
永源寺診療所での活動など、お話させていただく予定です。

お近くの方、どうぞお越しください。


2015年7月29日水曜日

施設での看取りについて

一昨日、毎月定例となっている「チーム永源寺」が開催されました。
今回は特養「もみじ」さんが担当、テーマは「施設での看取り」です。

永源寺地域に唯一の入所施設である「もみじ」さんは私が配置医師をしていることもあり、施設での看取りを積極的に行っておられます。

そして、最近、目立っているのが「看取り」を目的に施設から自宅へ帰られる方がゼロではないとのこと。

平成25年度 施設6人、自宅4人、病院3人 合計13人
平成26年度 施設10人、自宅2人、病院4人 合計16人
じつに7割以上の方が、非病院で看取りを行われています。

その理由を施設の担当の方にお伺いすると「本人の希望」とのことでした。

じつは「もみじ」さんでもお元気なうちから、ご飯が食べられなくなったら(看取りの場所は)どうしたいですか?とご本人に聞かれているそうです。
認知症などでうまく答えられない人もおられますが、自分の意思表示ができる方のうち、施設入所の方の半数以上が「家に帰りたい」とおっしゃられたそうです。

正直、私は施設入所の方は「最期まで施設」と考えておられる方が多いと思っていたのですが、全く違いました。
施設で看取って「これでよかった」と思っていた自分の考えがあさはかでした。
希望しても自宅に帰れる人ばかりではありませんが、「最期は家に連れて帰ってあげたい」あるいは「一週間だけなら」と言われる家族がおられることも事実です。

やはり中心にあるのは「ご本人の希望」ということに、あらためて気づかされたいい発表でした。



2015年7月7日火曜日

書評を書いていただきました。

月間福祉8月号に、一橋大学の猪飼周平先生が書評を書いていただきました。

ありがとうございます。



2015年6月8日月曜日

書評を書いていただきました。

JAHMCという医業経営コンサルタント協会さんの雑誌に書評を書いていただきました。




2015年6月5日金曜日

書評を書いていただきました

霞が関官僚が読む本というサイトで書評を書いていただきました。

http://www.j-cast.com/trend/2015/06/04236950.html?p=all

現役厚生労働省官僚の方にも読んでいただいているようです。
ありがとうございました。

2015年5月20日水曜日

雑誌「健康保険」5月号

当院を取材していただいた佐藤幹夫さんの記事です。
3回連続で書いていただきました。

ありがとうございます。



2015年5月18日月曜日

training journal 2015.5月号

トレーニング・ジャーナル5月号に、自治医大保健体育科の板井美浩先生が書評を書いていただきました。
板井先生は、私が学生時代にお世話になった先生で、先日、お会いした時もとてもお元気そうでした。

板井先生、ありがとうございます。


2015年5月5日火曜日

介護保険情報5月号

介護保険情報5月号に、環境ジャーナリストの本橋恵一さんが書評を書いてくださいました。

お会いしたことはないのですが、医療介護専門職とは違った視点からの論考です。最後に「在宅医療、地域まるごとケアから、この国の未来を考える必要がある」とまとめていただきました。
ありがとうございます。




2015年5月1日金曜日

山上小学校6年生に「いのちの授業」を行いました

花戸が学校医をさせていただいている山上小学校では、毎年内科健診のあと各学年一時間ずつ「いのちの授業」の時間をいただいております。


昨日、4月30日は6年生にAEDを使った心肺蘇生法の授業を行ないました。授業では全員がトレーナーを使って胸骨圧迫とAEDの使用方法を体験し、BLSにおける一連の動作の確認を行ないました。

小学生の皆にはやや難しい内容だったかもしれませんが、胸骨圧迫とAEDを使っての心肺蘇生法に大変興味深く参加してくれました。
小学生の皆さんには技術を習得するということ以前に、「具合が悪そうな人、困っている人を見かけたら、知らんぷりをせず助けよう」「君たちも人の命を助けることができる」ということを確認させていただきながら、楽しく参加していただきました。

注:写真は許可を得て撮影させていただきました。







2015年4月24日金曜日

2015年4月22日水曜日

山上小学校で学校健診を行いました

私が学校医をしている山上小学校では、内科健診と一緒に各学年一時間ずつ時間をいただいて「命の授業」というものをさせていただいております。

低学年の子ども達には、聴診器を10本ほど持参して、お互いの胸の音を聴いてもらいます。
子ども達は、
「お〜、ドクドクいってる〜」
「○○ちゃんの心臓、むっちゃでっかい!」
などとても賑やかです。

心臓の音を聴いた後は、心臓は君たちが生まれてから・・じゃなくて、お母さんのお腹にいるときから今まで一度も止まったことのない、止まってしまうと二度と元に戻らない大切な命なんだよ。それは君たちだけじゃなくて、お父さんやお母さん、おじいちゃん、おばあちゃん、先生、みんな同じ大切な命なんだよ。って話を。

中学年には、タバコや睡眠、テレビ、ゲーム、携帯電話などの生活習慣のお話など、各学年に合わせたお話をさせていただきました。


とても楽しい時間でした。
山上小学校の皆さん、大切な授業の時間をありがとうございました。



中日新聞さんに紹介していただきました。

先日、中日新聞さんに紹介していただき、今朝の「くらし」欄に掲載していただきました。
ありがとうございます。


2015年4月16日木曜日

10年前にいただいた手紙

往診に伺っている老夫婦のお宅へ昨日訪問診療に伺いました。5年前の秋に旦那さんが脳梗塞のため、右不全麻痺となられましたがリハビリを経てその年の年末には自宅に帰ってこられました。
以降、旦那さんは自宅で訪問リハビリや、通所サービスを受けられながらお二人で生活をされていますが、奥さん自身もこの頃はだんだん弱ってきたともお話しされる毎日です。
つい先日は、奥さんが旦那さんの薬を間違って飲まれたことを報告されたり、今日の訪問診療では、ご自身がトイレで失敗して下着を汚してしまうなどといったことをお話ししておられました。

今日も診察のあと「ご飯が食べられなくなったらどうする?」と尋ねたら、「先生、毎回聴いてくれるけど私の変わることはないぞ。あの手紙を書いてから、10年経つけど書き直さんとあかんか?」としっかりと答えられました。

確かに、旦那さんが具合が悪くなる前に頂いた手紙はもう10年が経とうとしています。

皆さんに私がいつも同じことを尋ねるもんですから「いつからが人生の最終章かわからない」と言われる方もおられますが、確かにわかりません。
でも、普段から自分自身のことですから考えておくこと、話せるうちに話しておくことが大切ですね。

帰り際、奥さんは「天気が良くなったら、畑に行きますわ」と笑顔で語っていただきました。

***********************(以下、引用)**************
先生 此の度はお世話になりありがとうございます。
私は今日迄かなりの幸せ者でしたが もう七十歳以上です
ので重態の時 延命治療(生命維持装置)は受けたくありません
身体中管だらけで息も器械でさせてもらっているような事は断じて
しないでください。
自分にも苦しい時間 私の大事な家族や姉妹にも親類の皆さんにも
心配と迷惑をかけたくありませんので 私には痛み止めと苦しみ止めの
注射を それだけをよろしくお願いします。

平成十七年二月より 命終る日迄

************************(引用終わり)***************
赤線は本人による





2015年4月14日火曜日

滋賀報知新聞さんに紹介していただきました。

地元紙である滋賀報知新聞さんに、著書の紹介をしていただきました。

http://www.shigahochi.co.jp/info.php?type=article&id=A0018047

「生」と「死」は連続したものですから、安心して最期を迎えられるということは、安心して生活できることにつながるはず。
そんなことを取材時に話をさせていただきました。

ありがとうございました。

2015年4月13日月曜日

北海道新聞に書評を掲載していただきました。

4月12日の北海道新聞さんに、名寄市風連国保診療所 松田好人先生の書評を掲載していただきました。
多くの方に読んでいただいて感謝申し上げます。


2015年4月10日金曜日

朝日新聞さんに紹介していただきました

今朝の朝日新聞さんの、社説余滴欄に「人生の終わり方を考える」というタイトルで、本の紹介もしていただきました。


2015年4月8日水曜日

東近江市長さんと

お私の著書「ご飯が食べられなくなったらどうしますか?」を、東近江市長 小椋正清さんに紹介させていただきました。

「東近江市のこと、永源寺地域のこと、互いに目指す方向は同じ「まちづくり」だ」と声をかけていただきました。
 
お忙しい中、お時間をとっていただいてありがとうございました。





2015年4月1日水曜日

石谷町で健康教室を開催しました

昨日、石谷町自治会さんのお招きで健康教室を開催しました。

地域の皆さんと一緒に健康づくりについて考える機会になったと思います。

石谷町の皆さん、ありがとうございました。


2015年3月29日日曜日

書評を書いていただきました

「ご飯が食べられなくなったらどうしますか」の本を書かせていただいてから多くの方に読んでいただいています。

本日の産経新聞で佐藤好美さんに書評を書いていただきました。

http://www.sankei.com/life/news/150329/lif1503290019-n1.html

ありがとうございました。

國森さんの写真と小串先生のあとがきとともに皆さんに読んでいただければと思います。



2015年3月26日木曜日

雑誌「健康保険」3月号

先日、取材にこられた佐藤幹夫さんの記事です。
ありがとうございます。




2015年3月25日水曜日

2015年3月24日火曜日

今日の中日新聞

東近江市さんが作成された在宅医療啓発冊子「わたしの生き方〜自分らしい最期を迎えるために〜」が紹介されました。




2015年3月10日火曜日

三方よし研究会のつくりかた


 滋賀県東近江医療圏は、東近江市、近江八幡市、日野町、竜王町からなる人口23万人の地域である。地域には11の病院と100以上の診療所、介護施設が点在しているものの、以前は東近江圏域内での医療と介護の連携はなかなかすすんでいなかった。このため、急性期病院に入院しても十分リハビリができないまま退院し不自由な在宅生活を強いられたり、訪問診療してくれる医者が探せないので、寝たきりであっても毎月外来に通院しなければならない人たちがいた。このような状況を改善しようと、2007年から保健所が中心となり地域の医療機関連携の取り組みがはじまった。当時の東近江保健所長と小串輝男医師会長が協力し、圏域内の病院および病院内の地域連携室、医師会、看護師、リハビリ担当者らに呼びかけた。まず、脳卒中連携パスによる連携会議を2007年9月からはじめた。当初は「東近江医療連携ネットワーク」と称し、医療だけの連携を意味する呼称であったが、やはり介護との連携やその他の職種との連携も視野に入れる必要があるという意見がでた。さらに、この地域ならではの名前をつけようと、近江商人の家訓である「売り手よし、買い手よし、世間よし」の三方よしにちなみ、「患者よし、機関よし、地域よし」の「三方よし研究会」と名付けられた。当初は、声のかかった関係者しか参加がなかったが、その後、薬局、歯科医師、消防署など関係するであろうと思われるあらゆる人たちに声をかけ、さらには、医療・介護の関係者だけではなく我々専門職と一緒に地域のことを考えてくれる非専門職、いわゆる一般市民の方々にも声をかけた。

少し、会議の様子を紹介しよう。
三方よし研究会は、毎月第三木曜日午後6時30分から8時30分まで、会場は各担当が持ち回りで開催している。
会場の特徴は、情報を一方的に伝えるスクール形式ではなく、小グループで議論ができるよう「車座」を基本としている。事例検討では、かかわった各担当者が自ら発表する機会を設けている。そうすることによって各職種の仕事はもちろん、各々の役割と連携の中での立場を皆に理解してもらうことができ、そしてなにより担当してくれた者にスポットライトを当てるのだ。初めての参加者には慣れない形式かもしれないが、我々の目的は、連携パスのマニュアルを作ることではない。立場や役割の違う多職種が各々の関わり方は違えど、急性期から回復期、維持期、在宅へと順に繋いでいくために、同じ方向を向いて仕事をすることと考えている。
また、運営上気を付けていることは、参加者の上下関係をできるだけ排除するようにしている。具体的には、「頭を決めてしまわない」ことである。もちろん各職種のトップや研究会の主宰は会議に参加しているが、会議の冒頭に堅苦しい挨拶の時間は設けていない。また、車座での座る順番も基本的にはくじ引きで決めている。そして、会の終盤には、全員の自己紹介の時間を設けている。(本来、参加者全員に自己紹介をしてもらうのであるが、最近は参加者が多く、初参加の者限定としているのが心苦しいところである。)このようにすることにより、自由に議論に参加することができ、すべての参加者がフラットな関係を築けているように思う。
そして、最も大切なことは、「時間を守ること」。一時的な盛り上がりも大切だが、継続して参加してもらえるように運営することも大切である。トップダウンではない組織をつくることにより、より現場の意見が反映でき、また現場も研究会で学んだことを礎としてさらに創意工夫を積み重ねることができている。

たとえば脳卒中の治療に関する議論のときのこと、病院関係者だけで考えると退院するところがゴールになってしまうが、病院以外の職種が加われば、患者さんにとっての療養生活は病院だけで完結するものではないとの意見がでた。さらには、病院での治療だけではなく、退院後の生活について介護スタッフや非専門職の方々からもたくさんの意見がではじめ、多職種で一緒に議論することができるようになった。退院後のリハビリで苦労しているという意見がでれば、入院中の早い時期からリハビリを始め、回復期へ連携できる体制を病院の医師が考えた。会議に参加している非専門職は、どのような時に救急車を呼べばいいのかを学び、地域に帰って広く伝えた。リハビリ病院の理学療法士からは、往診している主治医との書類だけのやり取りだけではなく、電話やFAXなどでこまめに連絡をとれるようになった。このように会議を進めるうちに、さらにお互いの顔の見える関係が築け、多くの人達がさまざまなところで動き始めた。予防から病院での治療、そして地域での暮らしまでを、皆が一緒になって議論することができ、医療介護関係者だけで解決できないことであっても、行政や一般市民とともに考えられるようになり、「できることからはじめよう」「走りながら考えよう」を合言葉に、回を重ねるごとにいろいろな知恵が湧き、そして皆が行動する、大きな「うねり」がおこり始めたと感じた。
現在、三方よし研究会は毎回120名以上の参加者を数えるまでになっている。参加する職種も医療介護関係者はもちろんであるが、行政、大学教授、NPOやボランティア団体などの一般市民の方、ジャーナリスト、宗教者など多岐に及び、視察なども含め、毎回のように圏域外からの参加者も迎えている。

三方よし研究会の目指すもの
今、高齢化率の高い農村部で地域の人たちが安心して暮らせているのは理由がある。田舎ならではの祭りや普請、あるいは近所づきあいが煩わしくて、都会に移り住んだ人もいるだろう。しかし、田舎に住み続けた人達は、そのようなお金では表しにくい煩わしさを「互助」という形で貯金をしてきたと考えることはできないだろうか。歳をとって身体が不自由になって誰かの支えが必要になった時、その貯金をした「互助」を使って生活をやりくりする。田舎の人にとってはごくごく自然な、お互いの生活を継続するシステムなのである。しかし、これは歳をとって田舎に移り住んだら得られるような単純なものではない。「互助」を得るために都会の人が田舎に引っ越すのではなく、今、自分の住んでいる地域で「互助」を貯めていく生活を心がけるべきだと思う。
じつは都市部でも「互助」にかわる人と人とのつながりがないわけではないと思っている。それは、同じ会社を勤め上げた仲間であったり、愚痴の言い合える仲のいい女性同士の趣味サークルだったり、場合によっては宗教のつながりであるかもしれない。都会にもこのようなつながりの関係からさらに一歩進んで、「互助」のつながりをもった「小さな田舎(コミュニティ)」をつくることができれば、年老いても、認知症になっても、独り暮らしであっても安心して生活ができる地域になるはずである。今、我々専門職に求められているのは、在宅での医療や介護を提供するための「地域包括ケア」づくりはもちろんのことであるが、お互いが地域のことを知り、地域で支えられるような「互助」を貯めることができるコミュニティづくりであるように思う。都市部よりも高齢化率が10年すすんだ東近江市永源寺地域で見えてきたもの、それは、我々専門職が提供する「地域包括ケア」と、非専門職が支えあっている「互助」を地域の中でつなぎ合わせること。これらのスキマをうまく埋める「地域まるごとケア」ができれば安心して生活できる地域になると信じている。

当院の在宅医療について

   ここ19年間の実績をまとめました。      死亡診断書枚数   在宅患者さん人数   訪問診療・往診のべ回数 2005年    12           66          492 2006年    17           70          553 2007年...